TRADEMARK CASES
商標を登録していなかったために起きた、実際の事件と仮想事例をご紹介します。「うちには関係ない」と思っている方にこそ、読んでいただきたいページです。
福岡の「長浜ラーメン」は、その発祥の地で複数の店舗が類似した名前で営業しています。この事件は、元祖長浜屋の元従業員同士が独立開業した後に、店名をめぐって争いになったケースです。
元従業員Aが「長浜家」の名称で開業し、「長浜家」の商標登録を取得しました。その後、別の元従業員Bもよく似た名称で開業したため、Aが商標権侵害を主張して訴訟を提起しました。
結果的に、Bは以前にAとの間で使用許諾の合意があったことなどから請求は棄却されましたが、商標登録を先に取得したAが訴訟を主導できる立場にあった点が重要です。
日本の商標制度は「先願主義」(先に出願した人が優先される)です。どれだけ長くその名前を使っていても、先に出願した者が権利を持つことになります。
世界を代表するIT企業・Apple社でさえ、商標調査のミスで巨額の損失を被っています。
中国の唯冠科技(Proview)社が、中国で「iPad」の商標を登録。Apple社がiPadを発売する何年も前のことでした。
Apple社は、唯冠科技の台湾法人から「iPad」商標の譲渡を受けたと考えていましたが、中国本土の商標権は含まれていませんでした。
iPadの中国販売が開始されましたが、商標権を持つProview社が販売差止めを請求。
最終的にApple社は6000万ドル(約48億円)を支払って和解。
Apple社が中国でiPadの商標権を取得するために支払った和解金
SIMULATION
セミナーで使用している仮想事例です。佐賀や北部九州の中小企業を想定した、商標トラブルのリアルなシミュレーションをご紹介します。
肥前食品株式会社(佐賀市):宅配寿司チェーンを展開。社長の秀島さんが、テイクアウト寿司の新ブランド「かっぽうすし秀」を立ち上げ。
山秀商事:首都圏でカウンター寿司店「すし秀」を展開する会社。「すし秀」を商標登録済み。
肥前食品が「かっぽうすし秀」ブランドのテイクアウト寿司を企画。商標調査をせずに販売を開始。北部九州で大ヒットし、年間売上8000万円を記録。
山秀商事の弁護士から内容証明郵便で警告書が届く。「『かっぽうすし秀』は、弊社の登録商標『すし秀』に類似する。直ちに使用を中止し、損害賠償を支払え。」
交渉がまとまらず、山秀商事が訴訟を提起。損害賠償請求額は2640万円。年間売上8000万円を基準に、侵害期間の利益相当額として算出。
売上8000万円 × 利益率 × 侵害期間で算出された損害額
商標法第38条は、損害額の算定方法を定めています。侵害者の売上高や利益をもとに算出されるのが一般的です。
| 年間売上 | 損害賠償の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 1000万円 | 200〜330万円 | 小規模な店舗 |
| 3000万円 | 600〜1000万円 | 地域の人気店 |
| 8000万円 | 1600〜2640万円 | チェーン展開 |
| 1億円超 | 2000万円〜 | 大規模事業 |
※ 上記はあくまで目安です。実際の損害額は個別の事情により異なります。侵害の悪質性、侵害期間、利益率等により金額は変動します。
「もし自分のお店の名前が他社の商標を侵害していたら…」そんな不安がある方は、まず先行調査だけでもご依頼ください。
ご相談のご予約 →IF WARNED
ある日突然、相手方の弁護士から警告書が届くことがあります。慌てずに、次の手順で対応しましょう。
警告書が届いても、すぐに要求に応じる必要はありません。記載された期限はあくまで相手方の要求です。ただし、放置も禁物です。
商標に詳しい弁護士に、警告書の内容を確認してもらいましょう。相手の主張が正当かどうか、専門家の目で判断します。
相手が本当に有効な商標登録を持っているか、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で確認。登録が失効していたり、指定商品・役務が異なる場合もあります。
自分の使い方が、本当に相手の商標権を侵害しているか検討。称呼(読み方)・外観(見た目)・観念(意味)の3つの観点から類似性を判断します。
先使用権、普通名称、記述的使用など、反論の余地がないか検討。相手の登録に対して無効審判を請求できるケースもあります。
弁護士と方針を決めて、書面で回答。場合によっては使用中止、ライセンス契約、和解交渉など、最善の着地点を探ります。
警告書が届いてお困りの方は、早めにご相談ください。弁護士・弁理士として、適切な対応をアドバイスいたします。
ご相談のご予約 →日本で大人気のアニメ「クレヨンしんちゃん」。そのキャラクター名と絵柄が、中国で無関係の第三者によって商標登録されてしまった事件です。
中国企業が日本側の権利者に無断で「蠟筆小新(クレヨンしんちゃんの中国語名)」を商標登録。衣料品やおもちゃなど幅広い商品区分で登録されたため、正規の商品展開に支障が生じました。
日本側はこの商標登録の取消しを求めて長期間争うことになり、多大な時間とコストを費やしました。
他人の有名な商標やブランド名を、本来の権利者に無断で勝手に商標出願することを「冒認出願」といいます。特に中国をはじめとした海外で問題になっています。
SEARCH EXAMPLE
新しい商品名を思いついたとき、まず行うべきなのが「先行商標調査」。実際の調査例をご紹介します。
「モンプチ」「mon petit」というフランス語(「私の小さい〜」の意味)は響きがかわいらしく、商品名やブランド名に使いたいと考える方は少なくありません。
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で「mon petit」を調査すると、すでに以下の企業が商標登録していることがわかります。
「mon petit」という名前を使って新商品を出そうとした場合、ほぼ確実に既存の商標権と衝突します。事前に調べずに使い始めてしまうと、後から名称変更を迫られたり、最悪の場合は損害賠償を請求される可能性があります。
QUIZ
商標の類似性は、称呼(読み方)・外観(見た目)・観念(意味)の3つの観点から判断されます。実際に考えてみましょう。
クリックして結果を確認してください。
解説:「かっぽうすし秀」のように他の語を付加しても、「すし秀」の部分が独立して認識できる場合(結合商標の分離観察)は、類似と判断される可能性があります。カタカナ・英語など表記を変えても、称呼(読み方)が同じなら類似です。一方、「秀鮨」は語順が異なり、称呼も変わるため、類似とは判断されにくいでしょう。
※ 実際の類似性判断は、個別の事情を総合的に考慮して行われます。上記は一般的な傾向を示すものです。
DEFENSE STRATEGY
商標トラブルを防ぐためにできることは、ビジネスのフェーズによって異なります。今のあなたに合った対策を考えましょう。
ネーミングを決める前に先行調査を行う。これが最もコストが低く、最も効果的な対策。数万円の調査で、数千万円のリスクを回避できます。
すでに使い始めている名前でも、まだ間に合います。先行商標を確認した上で、出願を検討。競合の動きにも注意を払いましょう。
警告書が届いてからでも、できることはあります。先使用権の主張、商標登録の無効審判、和解交渉など。ただし、早い段階の対策に比べてコストは大幅に増加します。
SEMINAR
本ページの事例の多くは、弁護士・弁理士 青山隆徳が講師を務めたセミナーの教材をもとにしています。
事例で紹介したトラブルは、すべて「まさか自分が」と思っていた方に起きています。今のうちに、一度ご相談ください。
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